ぼくは今、174センチで70キロある。BMIで言えば23.1。まあ、数字としてはそれほど悪くない。けれど、悪くないということと、ちょうどいいということの間には、いつだって見えない谷間がある。
減らしてみようと思った。筋肉はそのままで、脂肪だけをうまく手放して。目安は65キロ。BMIにして21.4。その数値に特別な意味があるわけじゃないけれど、自分の体が少し軽くなれば、景色の見え方も変わる気がした。
僕はよく、走ることについて考える。
「痛みは避けられないけれど、苦しみは選べる」となにかに書いてあったように、走るというのは選び続ける行為だと思う。走るか、立ち止まるか、やめるか。それでも僕は、あの寒い空気のなかを黙って走りたくなる。
12月、河口湖で10キロのマラソンがある。風は冷たく、空気は澄んでいて、遠くで鳥が一羽だけ鳴いているような朝が似合う場所だ。
ぼくはそこを走るつもりだ。走りながら、いくつかのことを思い出すかもしれないし、何も思い出さないかもしれない。ただ、走る。
そこに向けて、日々の食事をほんの少し整えて、夜更かしをやめて、何も特別じゃない生活のなかに、ちょっとした軌道修正を加えていく。
体が軽くなれば、心もほんの少し、ふわっと浮くかもしれない。それだけのこと。つまり、ぼくはもう一度、自分の身体と静かに対話しながら、生き方のチューニングをしようとしているのかもしれない。