2025年11月9日日曜日

深夜の皇居ラン

先輩との飲みが終わって、品川のホテルに戻ったのは0時半だった。

着替えを済ませ、外に出る。雨は降っていない。

今回の東京でのミッションのひとつは、皇居ランだ。

1周は5キロほど。品川からの往復を入れると15、6キロになるだろう。

ハーフマラソンに向けて、少しずつ距離を伸ばしていく段階にある。


本当は朝に走るつもりだった。

けれど、天気予報では夜明けとともに雨。

だから、深夜に走るしかなかった。

加えて、この時間になるまでの時間が濃密すぎて、走らないと眠れないなってのもあったから。頭はスパークしていた。

少しの不安と、少しの高揚を抱えて、ホテルの自動ドアを抜けた。


東京タワーを目指して走り出したが、地上からはまったく見えなかった。

ビルの隙間を縫い、青い案内標識を頼りに、皇居の方角へ向かう。

街は眠っているようで、実はどこかで静かに呼吸していた。

24時間ジムの灯り、タクシーの尾灯、光らない東京タワー。

深夜の東京には、昼にはない種類のリズムがある。


皇居に着いたとき、すでに心は少し弱っていた。

足は重く、さっき飲んだジンジャー梅酒のソーダ割が、体の中でゆっくり反乱を起こしていた。

引き返してもよかった。

でも、僕は前に進むことを選んだ。


誰もいない深夜の皇居ラン。

広すぎる静けさに心を砕かれそうになりながらも、一周を走りきった。

こんな時間でも、警備員たちは規則正しい間隔で立っている。

眠らない街・東京の輪郭が、そこにはあった。


雨がぽつぽつと落ち始めたころ、ホテルの灯りが見えた。

時計は3時を少し過ぎていた。

17.6キロ。これまでの練習で一番長い距離だった。


東京の夜景を背に、イヤホンから流れるのは、懐かしい槇原敬之とスキマスイッチ。

十代の頃の風景が、音に引き出されるように蘇ってくる。

人生は案外、音楽と同じで、思いがけないタイミングでリフレインする。


走ることは、過去を整理するための、いちばん静かな方法なのかもしれない。

冷え切ったからだを湯船に浮かべてから、長い長い1日を終えた。

坂を登るたびに時間がずれる

東京駅から秋葉原まで、リュックを背負ったまま走った。 そこからさらに四谷のホテルまで走ることにした。距離にして八キロほどだ。目的地は決まっていたけれど、急いでいたわけではない。ただ足を前に出し続けていれば、いつかは着く。走るという行為は、だいたいいつもそういうものだ。 途中、市谷...