長崎から乗った最終便では、どうやっても富士までその日に帰ることはできない。
だから僕は、川崎に泊まったんだ。
旅のつづきが、もう一話だけ用意されていたような気がした。
そして翌朝5時。
旅の延長線のように、僕はまた走り出した。
調べてみると、多摩川沿いは評判のいいランニングコースらしい。
ならばと六郷橋を渡り、東京側へ。
薄い朝の光が水面に落ちるなか、多摩川沿いをゆっくり下る。
多摩川大橋でまた神奈川に戻り、こんどは川を上っていく。
不意に、遠くから土を蹴る力強い音が聞こえた。
河川敷に目を向けると、馬がいた。
しかも一頭ではない。
朝練なのだろう。
馬が信号を渡り、馬に抜かされ、馬とすれ違い、馬に見送られてまた僕は走り出した。
旅の途中で、こんな朝があるなんて思ってもみなかった。
今日は9km。
昨日16km走ったわりには、足は意外と軽かった。
長崎の夜の余韻と、多摩川の馬たちの鼓動が、まだ身体のどこかで生きている。